インスタ運用のコンセプト設計で手が止まる会社の多くは、会社のコンセプトをそのままインスタに持ち込んでいます。「創業70年の確かな品質」「職人が一つずつ手づくり」。どれも本当のことですが、インスタで流れてきたときに指を止めてもらえる言葉ではありません。
SNSで見てもらえるのは、見る人自身の困りごとと、実際に使った人の感想です。オファシムがSNS運用の支援でコンセプトを作るときも、スペックや品質の訴求から入らず、お客様の困りごとと使用感を材料にしています。会社のコンセプトとは別に、SNSで集客するためのコンセプトを1文で書きます。
この記事では、その1文の書き方と、ヒアリングと同業の競合調査から作る手順、できた1文が使えるかを「投稿テーマが12本出せるか」で確かめる方法を順に書きます。週1投稿なら12本は3か月分です。企業アカウントを始めたものの、毎週何を投稿するかで迷っている担当者に向けています。
インスタ運用のコンセプトは、誰のどんな場面に何を届けるかの1文
インスタ運用のコンセプトとは、自社のアカウントが「誰の、どんな場面に、自社の何を届けて、見た人に何をしてもらうか」を1文にしたものです。毎週の投稿テーマは、この1文から決めます。
アカウント設計で出てくる言葉は似ていて混ざりやすいので、それぞれ何が決まるかを先に分けておきます。
| 決めるもの | 書く内容 | 決まること |
|---|---|---|
| 運用の目的 | インスタで最終的に増やしたいもの(問い合わせ・来店・採用の応募など) | 何の数字を見て続けるか |
| ペルソナ | 投稿をいちばん見てほしい1人と、その人が困る場面 | キャプションの1行目、投稿する時間 |
| コンセプト | 誰のどんな場面に、自社の何を届け、何をしてもらうか | 毎週の投稿テーマ、扱わない話題 |
| 世界観 | 写真の色味、文字の入れ方、言葉づかい | 投稿の見た目と口調 |
| KPI | 保存数、プロフィールへのアクセス、サイトへの移動、問い合わせ数 | 月ごとの良し悪しの判断 |
順番は上からです。ペルソナが決まらないうちにコンセプトは書けませんし、コンセプトが無いまま世界観だけ揃えると、見た目はきれいでも何のアカウントか分からなくなります。ペルソナの作り方はインスタ運用のペルソナ設計にまとめました。コンセプトが決まったあとの見た目の揃え方はインスタの世界観を統一する方法に書いています。
SNSのコンセプトは、会社のコンセプトとは別に作る
会社や事業のコンセプトは、そのままではインスタのコンセプトになりません。会社のコンセプトは取引先や社員に向けて自社の姿勢を伝えるもので、インスタのコンセプトは、まだ自社を知らない人に投稿を見てもらい、問い合わせまで来てもらうためのものだからです。
| 会社・事業のコンセプト | SNSで集客するためのコンセプト | |
|---|---|---|
| 読む人 | 取引先、社員、すでに知っている人 | 自社をまだ知らない人 |
| 主語 | 自社(私たちは〜を大切にする) | 見る人(〜で困っている人に) |
| 中身 | 理念、品質、こだわり | 困りごと、使った人の感想、解決の様子 |
| 役目 | 自社の姿勢を伝える | 投稿で指を止めてもらい、次の行動につなげる |
会社のコンセプトを捨てるわけではありません。「職人が一つずつ手づくり」という事実は、SNSのコンセプトの中では「なぜこの店なら困りごとが解決するのか」の根拠として使います。前に出すのは見る人の困りごと、後ろで支えるのが会社のこだわり、という並べ方です。
オファシムのSNS運用支援でも、会社としてのコンセプトはヒアリングで必ず聞きます。そのうえで、インスタに載せるコンセプトはSNSで集客する目線で作り直します。

インスタのコンセプトは、スペックより困りごとと使用感から作る
インスタのコンセプトは、スペックや品質の訴求ではなく、見る人の困りごとと実際の使用感から作ります。インスタは知り合いの近況や好きなものを流し見る場所なので、性能の数字は、ちょうど比べる気になっている人にしか届かないからです。
同じ商品でも、スペックで書いた投稿と困りごとで書いた投稿では、1行目がまったく変わります。説明用の例として、鯖江の眼鏡店で比べます。
| スペック・品質で書く | 困りごと・使用感で書く | |
|---|---|---|
| 1行目 | 鯖江製のチタンフレーム、入荷しました | 夕方になると耳の後ろが痛くなる方へ |
| 中身 | 素材、重さ、製法 | 痛くなる理由と、お店で直せること |
| 根拠の出し方 | 「軽量」「高品質」 | お客様の「一日かけても痛くならなかった」という感想 |
| 見た人の反応 | 眼鏡を探している人だけが見る | 痛みに心当たりがある人が保存する |
左の投稿を見てくれるのは、ちょうど眼鏡を買い替えようとしている人だけです。右の投稿は、まだ買い替えを考えていない人にも「自分のことだ」と思ってもらえます。

もう1つ、自社のお客様の困りごとと使用感を材料にすると、ほかのアカウントに真似されない投稿になります。Instagramはクリエイター向けの公式ブログで、すでにある投稿の転載や、ほかの人の投稿を集めて載せ直すアカウントは、おすすめに表示しにくいと説明しています(Instagram for Creators「Tips for Improving Your Reach」)。自社の店先や現場でしか聞けない話は、それだけで自社にしか出せない投稿です。
お客様の感想を使うときは、景品表示法にも気をつけます。2023年10月1日から、広告であることを隠した宣伝(ステルスマーケティング)は景品表示法違反になりました(消費者庁)。自社のアカウントでお客様の声を紹介するのは問題ありませんが、謝礼を払って個人に感想を投稿してもらうなら、広告だと分かる表示が必要です。
コンセプトの1文は、見た人にしてほしいことまで書く
企業アカウントのコンセプトは、最後に「見た人に何をしてもらうか」まで書きます。ここが抜けると、投稿は見られても問い合わせが増えません。
コンセプトの例としてよく挙がる「20代女性に向けたカフェ巡り」は個人のアカウント向けで、見られること自体がゴールです。会社のアカウントは、見られたあとに来店や問い合わせが起きないと続ける理由がなくなります。
1文は、次の4つを順につなげると書けます。
- 誰の:ペルソナを一言で(パソコン仕事が長い人)
- どんな場面に:困る瞬間(夕方に耳の後ろが痛くなる)
- 自社の何を:自社だから出せる中身(毎日フィッティングしている店の直し方と、お客様の感想)
- 何をしてもらうか:見た人の次の行動(無料の調整を予約してもらう)
つなげると「パソコン仕事が長くて、夕方に耳の後ろが痛くなる人に、毎日フィッティングしている眼鏡店が、直し方とお客様の感想を見せて、無料の調整を予約してもらう」になります。長く見えても構いません。この1文は社内で使うもので、プロフィールにそのまま載せるものではないからです。
オファシムがSNSの月次レポートで主に見るのも、いいねの数ではなく、プロフィールへのアクセス、サイトへの移動、問い合わせの数です。4つ目を書いておかないと、この数字を見る理由が説明できません。
オファシムのコンセプト設計は、ヒアリングと同業の競合調査から始める
オファシムはコンセプトを、クライアントへのヒアリングと、同じ業態の競合アカウントの調査を並行して進めて作ります。ヒアリングで自社の材料を集め、競合調査でその業態のどんな投稿が見られているかを確かめてから、1文にまとめます。
手順は次の5つです。
- ヒアリングで会社のコンセプトと材料を聞く:初回の60分では、現状の課題、ゴール、社内のリソース、競合状況の4つを聞きます。会社のコンセプトや品質へのこだわりもここで聞き、SNSでは根拠として使う側に回します
- 同じ業態の競合アカウントを調べる:地域の同業と、全国で伸びている同業のアカウントを見ます。見るのはフォロワー数より、保存やコメントが付いている投稿がスペックの紹介か、困りごとや使った感想か、という中身の違いです
- お客様の困りごとと使用感を集める:問い合わせのメール、店頭でよく聞かれる質問、お客様アンケート、口コミサイトやECのレビューから、困っていた場面と使ったあとの言葉を書き出します
- ペルソナを1人に決める:集めた困りごとのうち、いちばん多く、自社がいちばん解決できる場面を持つ人に絞ります
- 4つの要素で1文にまとめる:誰の、どんな場面に、自社の何を、何をしてもらうかをつなげます

2番目の競合調査は、真似をする相手を探すためにやるものではありません。同じ業態でも、スペックの紹介ばかりのアカウントと、お客様の困りごとに答えているアカウントでは、保存やコメントの付き方がはっきり違います。どちらの投稿が見られているかを、自社が出す前に確かめるための調査です。調べ方はインスタの競合分析の手順に書いています。
3番目で材料が少ない会社もあります。その場合は、営業や店頭のスタッフに「最近お客様に聞かれたこと」を5つずつ書いてもらうだけでも、困りごとの一覧ができます。
コンセプトが決まったかは、投稿テーマが12本出せるかで確かめる
コンセプトの1文ができたら、そこから投稿テーマを12本書き出してみます。オファシムの投稿代行は週1投稿(月4本)が標準なので、12本は3か月分です。3か月はアカウントの方向性が固まるまでの目安でもあります。
12本が無理なく出れば、そのコンセプトで運用を始められます。出ないときは、1文が広すぎるか狭すぎるかのどちらかです。
| 1文の状態 | 例 | 12本書き出すと |
|---|---|---|
| 広すぎる | 眼鏡のある暮らしを楽しむ | 何でも書けてしまい、どの投稿にするか毎週迷う |
| 狭すぎる | チタンフレームの軽さを伝える | 3本ほどで書くことがなくなる |
| ちょうどよい | 夕方に耳の後ろが痛くなる人に、直し方と感想を見せて調整の予約へ | 痛む理由、直し方、お客様の感想、よくある質問で12本に分かれる |
ちょうどよい1文は、テーマが自然にいくつかの種類に分かれます。眼鏡店の例なら、痛くなる理由、お店での直し方、お客様の感想、よくある質問の4種類を3本ずつ書けば12本です。種類が1つしか出てこないなら狭く、10種類も出てくるなら広すぎます。

書き出した12本は、そのまま最初の3か月の投稿の予定表になります。コンセプトを決める作業と、投稿の予定を立てる作業を一度に済ませられます。
「品質へのこだわり」型のコンセプトは、困る場面を足すと投稿が決まる
会社のコンセプトから作ったインスタのコンセプトは、困る場面と、見た人にしてほしいことを足すと使える1文になります。次の表は説明用に作った例で、実在の会社のものではありません。
| 業種 | よくあるコンセプト | 書き直した1文 |
|---|---|---|
| 住宅リフォーム | 確かな技術で快適な住まいを | 冬の浴室が寒くて親の入浴が心配な人に、施工した家の住み心地の声を見せて、無料の点検を予約してもらう |
| 和菓子店 | 素材にこだわった手づくりの味 | 手土産で失敗したくない人に、相手と場面ごとの選び方とお客様の感想を見せて、店頭での取り置きを頼んでもらう |
| 金属加工の製造業 | 高精度・短納期のものづくり | 試作の依頼先が見つからない設計担当者に、1個から引き受けた加工の事例を見せて、図面を送ってもらう |
| 眼鏡店 | 鯖江の職人がつくる上質な眼鏡 | 夕方に耳の後ろが痛くなる人に、直し方とお客様の感想を見せて、無料の調整を予約してもらう |
左の列はどれも会社の姿勢としては正しく、ホームページやパンフレットに載せる言葉です。右の列にすると、主語が見る人に移り、投稿の1行目に使える困りごとが入ります。
福井県は事業所に占める製造業の割合が12.0%で全国2位です(令和3年経済センサス)。製造業のアカウントは「高精度」「短納期」とスペックを並べがちですが、取引先を探している担当者の「試作を1個から受けてくれる所がない」という困りごとから書くほうが、見てもらえる相手が具体的になります。
コンセプトが合っているかは、3か月後の保存数と問い合わせで見る
コンセプトが合っているかは、運用を始めて3か月後に、保存数とプロフィールへのアクセスが前月より増えているかで判断します。オファシムは、週1投稿を続けて3か月で方向性が固まり、6か月でリーチやサイトへの移動が動き、12か月で問い合わせに表れるのを標準のペースにしています。
| 時期 | 見る数字 | 判断 |
|---|---|---|
| 3か月 | 保存数、プロフィールへのアクセス | 前月より増えていれば、コンセプトはそのまま |
| 6か月 | リーチ、サイトへの移動 | 横ばいなら、4種類のテーマのうち伸びていない種類を入れ替える |
| 12か月 | 問い合わせの数と中身 | 問い合わせの内容がコンセプトの困りごとと違えば、1文を書き直す |
1か月で数字が動かなくても、コンセプトは変えません。毎月変えると、どのコンセプトが良かったのか比べられなくなるからです。変えるのは、3か月たっても保存とプロフィールへのアクセスが横ばいのときです。
問い合わせが来はじめたら、その中身をコンセプトと見比べます。「耳の後ろが痛い」で書いていたのに、来る相談が「子どもの眼鏡」ばかりなら、実際に困っている人はそちらにいます。フォロワーの増やし方より先に問い合わせの数で見る考え方は、インスタでフォロワーを増やす方法でも書いています。

オファシムのコンセプト設計は、契約前の戦略設計で合意する
オファシムのSNS運用支援では、コンセプトを契約前の戦略設計の段階で決めます。ターゲット像、世界観、投稿の軸、KPIをクライアントと合意してから契約を始め、決めた内容は運用ガイドラインとして文書にします。アカウントの立ち上げと初期の設計は月額プランに含めていて、単発の料金はありません。初期費用は0円です。
| プラン | 月額(税込) | コンセプトに関わる作業 |
|---|---|---|
| 分析・内製化支援 | 88,000円 | 競合アカウントの分析と市場のリサーチ、投稿テーマとトーンの改善提案、KPIの設計 |
| 投稿代行 | 66,000円 | 決めたコンセプトに沿って週1投稿(月4本)を企画・制作・公開 |
| セット | 154,000円 | 上の2つに加えて、月1回の定例と、投稿の基準やトーンを決める運用ガイドラインの整備 |
ガイドラインに残すのは、コンセプトの1文と、扱う4種類のテーマ、扱わない話題です。担当者が替わっても同じ方向の投稿を続けられるようにするためです。料金の考え方はSNSコンサルの費用、分析と投稿を分けて頼む理由はSNS運用代行の進め方と費用相場に書きました。
すでにアカウントがあって、今の投稿が誰に向いているか分からない場合は、無料のSNSアカウント診断から始められます。今の投稿とインサイトを見て、プロフィール、投稿の型、伸びている投稿の共通点から、先に直すところを3つお伝えします。




